あなたにとって企画書や提案書の作成は切っても切れない業務ではないでしょうか。「新しい企画を何とかして通したい」とか、「問題点を上層部に理解してもらいたい」など、上司からの指示での作成のみならず、あなたの希望を伝えたいから作るということも当然あるでしょう。そんな時にプレゼンテーションや共有をする為の「資料」はとても重要な位置にあることは疑いようのない事実です。
しかし、いざ作成という段階になると、企画や提案の内容が頭の中ではなんとなくイメージできているのに、それをまとめ、資料に落とし込むのは案外難しいと感じているのではないでしょうか?結果、資料作成ばかり時間がかかってしまい、肝心の内容の煮詰めが甘くなってしまったという苦い経験もあるかと思います。
今回はそんな問題を解決する為に資料作成の基本をあなたに習得していただき、効率よく業務ができるようになっていただきます。まずは資料作成の基本を覚えるとどんなメリットがあるのかをまとめます。
- 作成する資料の目的をはっきりと意識するようになる
- 資料作成が早くなる
- 自分の伝えたいことが正確に伝わるようになり、企画や提案も通りやすくなる
基本1資料の目的を整理する
当然のことのように思われるでしょうが、資料作成の目的が作り始めたとたんに曖昧になってしまうケースをよく見かけます。あれもこれもとデータを盛り込むうちに忘れてしまうというパターンですね。ですので、まずはあなたがこれから作ろうとしている資料の目的を最初に整理しておきましょう。資料作成の目的を整理したものはPCでも紙でも構いませんので、常に確認できる位置に置いておいてください。パワーポイントで資料作成をするのあれば、表紙部分にメモとして記載しておくのも良いですね。
次に何を整理するかについてですが、あまり細かいことは考えず大きい視点でとらえてください。具体的には以下の内容を整理します。
- 誰に対して
- 何の為に
- 何を訴えたい
例えばe-webが「A」という商品の販売数を拡大するために「B」というイベントを行いたいと考えていたとします。イベントを行う為にはイベント実行の許可獲得と予算の確保をしなくてはなりません。このケースを枠組みにあてはめると、
- 社内の決裁権をもつ人(上司や役員など)に対して、
- 「A」という商品の販売促進の為に、
- 「B」というイベントを行う必要があることを訴えたい
「そのために資料を作る必要がある」というように整理することができます。当然これだけでは資料は作れませんが、スタートとなるこの3項目をしっかりと整理・理解して進めてください。
基本2内容を整理する
目的は整理することができましたので、今度は企画や提案をどのようにして通していくか、内容を決めていきます。しかしまだ内容のひとつひとつを細かく作り込んでしまってはいけません。資料の大まかな流れを考えてから、各項目の詳細を作り込むという流れにしないと全体像を見失うことになります。
1.企画書のタイプを決める
企画書は大きく「提案型」と「問題解決型」という、ふたつのパターンに分かれます。あなたがこれから作る資料はどちらにあてはまるか考えてみてください。今回は先述の例を元に「提案型」で見ていきたいと思います。
2.タイトルを考える
まだこの段階では的確なタイトルを決めることは難しいかもしれません。ですので仮のタイトルを設定しておき、最後にもう一度見直すようにしましょう。もちろんこの段階でタイトル決定に時間をかける必要はありません。
タイトルの決め方としては、提案内容を一言で表現する言葉が良いでしょう。e-webの提案型企画書の例では「Aの販売数を拡大させるBイベントの提案」としておきましょう。
3.目次を考える
「目次」と表現していますが、実際には提案内容の大きな項目のことを指しています。なぜ「目次」としたのかというと、目次であれば項目の詳細まで考える段階では無いと意識することができるからです。どんな道筋で内容を組み立てれば読み手を納得させられるのか考えながら決める必要がありますが、基本的なパターンが存在するのでそちらを紹介します。ぜひご活用ください。
☆導入
客観的な現状報告や問題点、または市場調査・競合調査結果などの事実データ
☆展開
導入部分の内容を根拠にした提案の趣旨の説明。可能であれば提案内容の優位性も記載
☆まとめ
メリットや費用対効果、どんな結果が予想されるか
では、e-webのケースであてはめてみましょう。
☆導入
商品「A」は販売数がピーク時の半分にまで落ち込んでいる。競合であるC社が類似商品の販売を開始した時期と販売数の低下した時期が一致する為、それが大きな原因だと考えられる。また、お客様アンケートの結果、Aの最大の特徴が充分に浸透していないこともわかった。
『商品Aの販売実績と競合他社の近況』
『ユーザーの商品Aの認知度調査結果』
☆展開
C社には無いAの特徴がユーザーには浸透しておらず、違いを徹底的にアピールできるBというイベントが有効である。
『イベントBの提案』
☆まとめ
Bというイベントを行うことで販売数の拡大とともに、ブランド価値も高めることも可能と予測できる。
『イベントBの費用対効果(イベントで必要とする概算費用と、予想される売上拡大数。最終的には粗利)』
『イベントBで得られる優位性』
基本3詳細を作り込む時に心がけること
この段階まで来て、各項目の詳細を盛り込むようにしてきましょう。しかし、詳細を作り込む時に気をつけるべきポイントがありますので、ご紹介しておきます。
1.作り込みの最初の段階では色を使わない
「私は資料作りのセンスが無い」とおっしゃる人は、色をたくさん使いすぎているということが非常に多く。「資料作りが進まない」という人は何色を使うか迷う時間が長く、結果的に時間がかかるというパターンが多いようです。はっきり言ってその時間やセンスは必要ありません。何よりもまずは内容を充実させる為に、色を使わない、もしくは単色で作ることを強くおすすめします。ある程度完成した段階になって時間があるようであれば、重要な部分を強調する為に色をつけたり、大きくすると良いでしょう。
2.原則的に「1スライド(ページ)に1メッセージ」
人間は自分が思っているよりも一気に情報を理解できる力は少ないと考えてください。e-webでは科学的根拠を提示していませんので絶対とは言い切らないことにしますが、経験則では感じています。伝えたいことがたくさんあることは理解できますが、プレゼンテーション資料の場合は特にこの基本原則を守って作ってください。そしてページ内の最後には、そのページで何を伝えたいのかを一言でまとめておきましょう。そうすると自分でも見返すときに非常にわかりやすくなりますので一石二鳥です。
3.企画書に長文は厳禁!
2番でもお伝えしていますが、人が理解できる能力には限界があります。伝えたいことを長文にしてしまうと文章自体を理解するために時間が必要になってしまい、理解することから離脱する人が増えます。長くなりそうな時は箇条書きや図表にするなどで対処しましょう。
4.嘘は書かない・コンプライアンスを守る
その資料は社内だけであり、外に出ることは無いかもしれません。しかし事実では無いことを書いたり、転載であることを記載せずに企画を通すことは絶対にあってはなりません。著作権については「画像を扱うなら覚えて得する5つのことPart2」 で説明していますので、参考にしてください。
5.読み手(伝えたい相手)の思考を想像する
「伝えると伝わるの違いを意識すると言葉は変わる」でも解説しましたが、相手に伝えたい時は相手の気持ちを予想し、相手にとっての利益やメリットが何かを充分に考える必要があります。自分の希望ばかりを主張しても企画が通ることはありません。
それでは最後にもう一度資料のタイトルを見直してみましょう。最初は思いつかなかったブランド価値の向上も売上拡大と共に得られる可能性が出てきました。ですので、
「Aの販売数を拡大させるBイベントの提案」 → 「販売数とブランド価値向上を可能にする商品AのBイベントの提案」
と修正しました。
総括
いかがでしたでしょうか。本文でも述べていますが、細かいところや手元ばかり目がいってしまって、全体像を把握できていないから資料作りが進まないということが多いように感じます。「もう時間が無い!」そんな時こそ一度立ち止まって全体像を把握するようにしてみてください。結果、何にどれくらい時間が必要で、何をする必要があるのかがはっきりと見えてきますよ。